At The Drive-In解体新書 Jim Ward編 (Jim Ward's Equipment)
This article is about Jim Ward's guitars, amps and etc. Especially At The Drive-In Era.
2020年6月5日 詳しいアンプの情報とギターの情報を更新
1.はじめに
オマー・ロドリゲス・ロペス編も書いたんで見てください
http://aburiot.hatenablog.com/entry/2020/01/27/063249
Jim WardはAt The Drive-Inのリズム・ギタリスト、キーボード、コーラスを担当しているが、オマーと比べて余りにも過小評価されているのに加え、全然ネットに情報が無いのでこの「At The Drive-In解体新書」を勝手に書こうと思ったのがキッカケだった。
ジムはATDIの初期メンバーで、94年からバンドを初めて、96年から一年間ATDIを休止、そのあとに2001年の解散まで居続ける主要なメンバー。オマーやセドリック(ボーカル)に比べて目立たない存在だが、実はジムの大学に行く資金をバンドのアルバムを出すために使ってたり、かなりの苦労人ポジションだったりする。
本記事は、そんな彼の機材について考察していきたいと思う。
2.P-90一徹
彼は全体を通してP-90を搭載されたギターを使っていることが多い。Rig Rundownによれば、
ジム・ワードのギターへの愛情は彼の10代の頃に始まり、最初に形になったのはAirlineというガラクタのギターだった。そのギターは高校最初の彼のバンド「セルフ」で役立った。(おそらく)そのバンドが”デカいライブ”を成し遂げたことで、父親にジムが何をやっているかということを証明し、”本物のギター”、つまりはケース付きの新品のテレキャスターを手に入れることができた。10代の残りの時期、彼は”スチューデント”モデル、例えばFender MustangやBroncoなどのモデルを弾いていた。
At The Drive-Inでジムの音の空間(?)と演奏スタイルを発展させていくうちに、彼は一転してSGの世界に足を踏み入れた。彼の機材オタクぶりが頂点に達していたとき、彼がATDIのために乗っていたのは、1961年製のオリジナル・Gibson SG Special(原文間違い・本当はSG Junior)だった。そのギターや他のギターの主成分もP-90だった。彼の極端でなく、前のめりになりすぎないリズムギターのスタイルはP-90にピッタリだった。なぜならジムはそれらが乗ったギターに対して、”ど真ん中で、トレブリーすぎることもなく、荒々しすぎることもない。一切気まぐれなところはない、謙虚な働き者であると感じているからだ。(著者訳)
とある。このことから、彼のサウンドの中核はP-90であると言えるだろう。しかし、意外なことにATDIのキャリアの中では中盤あたりから象徴的なSGが登場する。まずは初期からのギターの遷移を見てみよう。
ジムは94年からATDIのリーダーとして活動を開始するが、わりと短いスパンでギターが変わっている。ATDIが普通のパンクっぽい音楽をやっていた頃、主にテレキャスターを愛用していたようだ。
面白いのが、この「FUGAZI」というインレイのようなものだ。ジムはSparta時代の「無人島に持っていけるとしたら?」というインタビューで、FUGAZIのRepeaterを挙げている。
it!: Say you were being exiled to some deserted island and all you had was a CD player, a lifetime supply of batteries and four albums. What would those albums be?
JW: I would probably take Fugazi "Repeater," Billy Joel "Piano Man," U2, uh, probably "The Unforgettable Fire" and the Beatles "White Album."
Interview with Sparta's Jim Ward | Itcover Stroy | fredericksburg.com
ATDIはモッシュ行為・ダイブ・暴力などをライブで禁止していたことが有名だが(少なくとも再結成前は)、この愛に溢れたギターを見る限り、そういった思想はイアン・マッケイから受け継いでいたことは間違いないだろう。
また、1999年頃まではこの変わった仕様のテレキャスター・シンラインを使っている。ヘッドにFenderと書かれているが、フレイムメイプルトップだったり、コントロールプレートが2つついていたり、ラップアラウンドテイルピースだったり、リアハムだったり…と変な要素が詰め込まれたギターだ。このモデルに関して探してみたのだが、Fenderはこういったモデルは出していなかった(単に私のリサーチ不足の可能性あり)。
ジムはATDIの時期や、解散後に結成したSpartaなどで改造が施されたギターを使っていることが多いが、それこそDIY精神なのではないのだろうか。
1998年後半あたりから彼のメインギターはGibson SG juniorへと移行することになる。おそらくジムと言えばこのSGか、後ほど紹介する白いSGのイメージが強いのではないだろうか。
このリアPU一発というシンプルな仕様は、ATDIの解散後結成されたSpartaで使うギターにも色濃く反映されていたりする。
ペルハム・ブルーという珍しいカラーのSG Junior。ピックガードがパーロイドに交換されているのに加え、テキサス州のステッカーとATDIのステッカーが貼ってある。ヘッドに「Les Paul」と書いてある時期のモデルで、このことから1961年~1963年までに生産されたものだと推測できる。
本人によると1961年製らしいものの、1961年のSG juniorに特徴的な傾いたバーブリッジが採用されていない。ただ時代的に結構ルーズなので、過渡期の可能性もある。1961年でなければ、恐らく62,63年の線が濃厚だろう。
In casino outは98年発表のアルバムだが、ライブでは1999年あたりから登場してるのでレコーディングには使ってないかもしれない。ただ虎の子的な感じでライブには使ってなかっただけの可能性もある。
2020年6月5日追記:98年のライブで青SGは使われていたので使われている可能性が高い。
2000年あたりから使われ始めたポラリス・ホワイトのSG Junior。ステッカーが貼られる前の写真だが、既にピックガードがべっ甲のものに交換されている。これもヘッドにロゴがあるタイプのもので、1961~1963年製のものであると推測できる。
2020年6月5日追記:過去にジムはebayにこのギターを売りに出していたらしく、アーカイブされているサイトの上では1964年製となっていた。このサイトが間違っているか、また単に過渡期だったために残っていた可能性が考えられる。
このSGはRelationship Of Commandのレコーディングにも使われており、ピックガードを外した状態で演奏しているのが確認できる。レコーディングの様子はこの映像に残っている。
ヴィンテージを使うのが怖くなったのか、壊れたのか定かではないが、その後は当時の現行品のSG Juniorを使うことが多くなる。本機は主に2001年のライブで使われていることが多い。
基本的に1vol,1tone、1基のP90という従来のスタイルは踏襲しているが、ピックガードがラージという点から、当時の現行品のSG Juniorであったと考えられる。
また、2001年頃になってから頻繁に使われるようになったのが、似た仕様のFernandesのMonterey Xというギターである。
比較するとわかると思うのだが、ピックガード増設、ブリッジをラップアラウンドタイプに交換、リアにP90をマウントなど、随分手の混んだ改造がされている。このモデルでジムが使用しているものに近いものを探してみたのだがインターネット上では見つからず、本当に改造したという可能性もある。
3. アンプ
彼は1999年頃まで、Marshallの子会社であったPARKという会社のアンプを使用している。
これは憶測だが、モデルはPark 45というもので、MarshallのJTM-45と中身は似ているらしい。
2020年6月5日追記:ebayでJim wardで調べてみるとなんと彼が当時使っていたParkを発見した。
Check out 1973 Park 150 Watt Artist owned Jim Ward Sparta ATDI Sleepercar Road and studio https://www.ebay.co.uk/i/323928056684?chn=ps
1973年製・Parkの150というアンプ。まだ買えるらしい。
憶測に過ぎないのだが、FUGAZIのギー・ピチョットもPARK製のアンプを愛用しており、そこからの影響ではないだろうか?
また、これは一時期でしかないのだがMesa/boogieのMARKⅡも使っている時期がある。
2000~2001年まではMesa BoogieのDUAL RECTIFIERを使っており、サウンド的にもRelationship Of Commandのレコーディングで用いられているのではないだろうか。
一貫してジムが用いるキャビネットはMarshallのストレートのものであり、仕様から恐らく1960Bだと思われる。
彼の後期のサウンドの特徴としては、P90+レクチファイヤーのクランチという組み合わせで切れの良い重厚感のあるサウンドである。この組み合わせがオマーのペラペラしたリードの音と絶妙にマッチして、他のポストハードコア・バンドとは一線を画するATDIサウンドが生まれたのではないだろうかと私は考えている。
3. エフェクター
アンプやギターもそうであったのだが、ジムの機材に関しては本当に情報が少ない。なので、基本的にYoutubeの映像をスクショして拡大したり、昔の写真を漁って研究などをしたので、ほとんど憶測であることに注意してほしい。
目を凝らさないと見えないのだが、少なくとも1999年にはProco RAT2(USA製)を使っていたことがわかる。In Casino Outにおけるジムの音作りは、クリーンとディストーションの二種類しかないので、前述のPark 45とRATの組み合わせで音を作っていたのではないだろうか。
画像が荒すぎてよくわからないが、恐らく左からレクチファイヤーのチャンネル切り替えペダル(初期型)、BOSSのTU-2、BOSSのTR-2、BOSSのDD-5ではないだろうか。この推測は、この画像以外にも色々と資料を探した結果辿り着いた結論である。
TU-2とDD-5に関しては、Sleepercar(ジムがSpartaの休止中にやっていたカントリーロックバンド)の盗難された際のメッセージの中に載っていたのでそう考えた。
ペダルの繋ぎ順に関しては、センドリターンなどを使わずにそのままインプットに繋いでいるようだ。これはオマーも同じ手法を用いているのだが(詳しくはオマー編を参照)、ディレイの音がそのまま歪むことにより、ATDI特有のサウンドを生み出している。