At The Drive-In解体新書 Omar Rodriguez-Lopez編 (Omar Rodriguez-Lopez's Equipment)
aburiot.hatenablog.com Jim Ward版も書きました
This article is about Omar Rodriguez-Lopez's guitars, amps and etc. Especially At The Drive-In Era.
1. はじめに
どうしても眠れないので自分が最も好きなバンド、At The Drive-In(ATDI)のOmar Rodriguez-Lopez(以後オマーと表記)の自分なりの研究のまとめを作ってみようと思う。
オマーは1995年にベースとしてATDIに加入し、1996年にリードギターに担当が変わる。そのとき同時にドラムのTony HajjarとベースのPaul Hinojosも加入することになり、1997年にリズムギターのJim Wardが休止から復活し、以後2001年の解散までこのラインナップとしてのATDIを続けることになる。
2. オマーの特異性:機材
私が思うに、彼の凄さとは機材の使い方にあると思う。彼はもともと父親がラテンピアノ奏者だったこともあり、元々ピアノがやりたかったらしいのだがあまりできなかったらしく、それが影響しているのか只者ではないギター・サウンドを作り出している。
2.1 愛機・スーパーソニック
彼のATDIでのキャリアの殆どは、スクワイア・スーパーソニックが使われている。極初期はSGを使っていたらしいが、恐らくライブ・パフォーマンスを見る限りでは彼はギブソン系は向いてないような気がする。
彼は二本のスーパーソニックを使い分けており、片方はメイン・片方は弦が切れたときのサブという使い方をしていた。
彼のスーパーソニックは元々右利き用のものを反転して、コントロールプレートを移設しているという部分に最大の特徴がある。スーパーソニックを使い始めたとき(98か99年頃?)には、既にこの改造が施されていた。しかしピックガード・PU・ブリッジのコマは変更されておらず、「オマーのスーパーソニック」として有名な形になるまでは、もう少し後のようである。
順を追って見ていくと、徐々に改造されていっていることがわかる。
最終的に一号機(メイン)は
・ノブの交換
・ブリッジのサドルの交換(おそらくグラフテックのもの)
・ピックアップの交換(Seymour Duncanのものなのは確かで、SH-4 JBだとされているのを海外フォーラムで見たことがあるが、定かではない)
・コントロールプレート移設・ピックガードの交換
・スクワイアのロゴが削り落とされている
という改造をされることになる。
2号機(サブ)の登場は1999年頃で、全く改造を施されていないスーパーソニックを見ることができる。
2号機の最終形は1号機とほぼ同じで、ステッカー跡の有無とノブで見分けることができる。
彼はATDIでほとんどはスーパーソニックを使っていたが、他のサブとしては1970年代のものだと思われるムスタングとMatonのMS500が使われていた。ムスタングに関してはこの動画で途中で交換しているのがわかる。意外にもムスタングはオマーの最近のキャリア、特にAntemasqueでメインギターとして使われている。
2.2 エフェクター
オマーといえば馬鹿みたいな機材の量というイメージが定着しているが、意外にもATDIとしてのキャリアの初期はチューナーすら使っていなかったようである。
この動画によれば、ドラムのトニーとベースのポールに「プレイ・スタイルは好きだけど、チューナーを使ってくれ!」的なことを最初に言われてチューナーを使いだしたらしい。
1999年頃ぐらいまでは、彼はエフェクターは4つしか使っていなかった。以下に列挙する。写真がないのでこの動画から推測した。 まな板みたいなものに載せている。
BOSS DD5
BOSS BF-2
BIXONIC EXPANDORA(後期型のノブが4つのもの)
(BOSS OC-2)
OC-2をカッコで閉じたのは、たまに入っていないことがあるのとキャリアの後期ではボードから無くなっているからというのが理由である。しかし、他のペダルはキャリアの後期まで用いられており、これらが彼のギター・サウンドの核であるといえると思う。In-Casino Outの時期のギターサウンドは、これらで全て再現できる。
彼の足元が増え始めたのはこの後からである。
増え始めてきた頃の足元。左から、
Ernieballのボリュームペダル
スイッチャー(メーカーわからず)
BOSS DD-5
BOSS OC-2
Electro Harmonix Small Stone(でかい時期のもの)
Electro Harmonix Deluxe Memory Man(初期型)
ADA Flanger
BOSS DD-5
BOSS TU-2
BOSS BF-2
見えないがおそらくLINE6 DL4とProco RAT2(USA製)
ボリュームペダルとスイッチャーはすぐ外れているのでそこまで重要ではないが、これらはRelationship Of Commanのレコーディングにも用いられているので彼の後期のサウンドはほぼこれらで作られていると言っても過言ではない。彼のボードはBIXONIC EXPANDORAとRAT2が結構頻繁に入れ替わるのだが、何らかの基準があったりするのかは定かではない。
最終的に、これらに
Digitech Whammy 4
Moog MF-102 Ring Modulator
が追加されているようだ。
私もイメージ上その印象が強かったので反省しなければいけないが、オマーはワーミーをレコーディングでは一度も使っていない。(イメージだけでワーミーを買って後悔したことがある)ライブでのインプロビゼーションではこの2つをよく使っているが、アルバムのサウンドを聴く上ではこれらは一度も使われていない。
さて、今までの情報を整理した上でオマー・サウンドをコピーするために重要なのは何であるかということを考察してみよう。私は、最低限必要なのは以下の6つだと考える。
①デジタルディレイペダル(ディレイ用)
②デジタルディレイペダル(グリッチ用)
③ラット系のペダル
④Deluxe Memory Man系列のペダルか、Memory boy
⑤フェイザー(できればSmall Stone)
⑥リアハムのフェンダー系ギター
ここで強調しておきたいのは、最も重要なのはペダルの繋ぎ方であるということだ。そのつなぎ方とは、歪ペダルを一番最後に置くことである。この繋ぎ方によって、ディレイサウンドが一気に飽和するようになり、「Invalid Litter Dept」に代表されるようなカッコイイディレイサウンドを出すことができる。
この写真のように派手にディレイがかかる設定にしたほうがオマーのサウンドには近づく。
Deluxe Memory Man系列のペダルか、Memory boyと書いたが、オマーはこれをヴィブラートや発振、普通のディレイとしてまで幅広く用いており、The Mars Voltaの時期にも愛用されていた。例えばCosmonautの後半などで、このペダルの一番かっこいい使われ方がされている。(2:15~)
このウニョウニョしたサウンドからどうしてギュンと下がるようなサウンドが作り出せるのか?理由は簡単で、カメラのアングルのせいで見えないが彼はディレイ・タイムのノブを足で動かしてこのサウンドを作っているのである。
また、Cosmonautは他にも面白いエフェクターの使い方がされている。同じ動画の2:54を見て欲しい。このギュルギュルギュルというサウンドはSmall Stoneを使って出しているが、これもスピードのノブを足で動かして作り出しているサウンドである。恐らく、足で操作しやすいという理由でわざわざ古いほうの大きいSmall Stoneを使っていたのではないかと推測できる。手前味噌であるが、これらを踏まえた上でCosmonautのカバーを作ってみた。この頃は研究があまり進んでいなかったのでそこまでサウンドの再現性は高くないとは思うが、最低限のツボは押さえられているように思う。
前述の通り、彼のサウンドを作り出すのには最後段に歪ペダルを置くことが必要不可欠である。私が思うに、ヘッドのチャンネルを切り替えるような感じで歪ペダルを使っていたのだと思う。それを踏まえた上で、最後に彼のアンプを考えてみよう。
2.3 アンプ
彼はThe Mars Voltaではオレンジのスタックをめちゃくちゃな数使っていた(もっとも、TMVの後期には落ち着いたらしいが)ため、オレンジのイメージが根強いが、彼はATDIでは2000年ぐらいからオレンジアンプを使いはじめ、その前まではMarshallのSuper Lead 100wを使っていたようだ。彼はジミヘンをフェイバリット・ギタリストとして挙げているのだが、オールドマーシャル系を使っているのはジミヘンの影響なのだろうか?
正直私はアンプの類に関してはあまり詳しくないので、キャビネットの詳細はわからなかったが、昔の写真を見るとMarshallのエンブレムがついていたのでMarshallの4×12、ストレートのキャビネットであることは確かである。
99年頃のライブなどを見るとこのキャビ+アンプの隣にオレンジのアンプが並んでいることがあったので、恐らくオレンジは元々サブのアンプだったのだと思う。オレンジアンプに変わってから、プエルトリコの国旗がかけられていることが多かったのだが、こちらの写真はモデル名が写っている。
このアンプはOrange OTR120という、Orange OR120のマスターボリューム付きのモデルであるようだ。彼がオレンジを使い始めたキッカケとしては、MC5がオレンジアンプを使ってたからだそう。Orangeアンプのインタビュー動画でそう答えている。
キャビはおそらくMarshallの1960Aであると思われる。
この二台のアンプに共通するのは、「でかい音量でクリーンが出る」という点である。2つとも1チャンネルのアンプで、最終段に歪みペダルを置いていたことからわかるように、チャンネルを切り替えるようにして使っていたのだと憶測できる。
彼のサウンドとは、古い機材と当時の新しい機材(エフェクター)を組み合わせて創り出した完全に新しいサウンドだったといえる。
3. 最後に
最近ATDI好きが私の周りで増えており、それに伴いたまにオマーの機材について聞かれることがある。多分だけど、愛知県で一番ATDI時代のオマーについて詳しいのは自分だと思っている。なので、ここで自分が集めた知識を体系化しておこうと思い、このブログを書いた。もちろん機材以外にも彼のプレイスタイルには特徴はあるが、正直音楽理論とか全然わからない。突っ込みどころが多くなりそうなのでそれについて書くのは控えた。次回は過小評価(Underrated)されている、とよくATDIのコメ欄に書き込まれているリズム・ギタリスト、Jim Wardについて書こうと考えている。→書いた
これらは全て独自研究であり、出典も怪しいのであまり参考にはならないが、オマーに憧れる全てのギタリストにとって参考になれば幸いである。